初のアイヌフードフェスティバル、日本で開催

アイヌの食の英知を次世代につなぎ、世界に発信 アイヌ女性の力、メノコモシモシ

2017年10月28日~29日、札幌ピリカコタン(札幌市アイヌ文化交流センター)にて、 第一回アイヌフードフェスティバルが、スローフード・インターナショナル、日本スロー フード協会、アイヌ女性会議メノコモシモシの共催で開催されました。

アイヌ民族はアイヌ語で言うところのアイヌモシリ(日本列島の北海道島・千島列島およ び樺太島とカムチャツカ半島)の先住民族です。時代とともに、アイヌの土地が「倭人」 による侵攻によって、アイヌの人々は法的、社会的、文化的、経済的、精神的な服従を強 いられてきました。日本政府がアイヌを日本で唯一の「先住民族」と認めたのは、2008 年になってからのことです。そのため、日本に住む多くの方々が日本の先住民族であるア イヌの歴史、文化を継承してきている人々なのかを知ることが、いまとても大切な課題と なっています。

今回のイベント発足のきっかけには、一般社団法人日本スローフード協会の代表である伊 江玲美氏の長年の思いも秘めています。彼女のルーツは琉球王国にあり日本のもう一つの 特殊の文化、歴史背景を持った”沖縄“の女性として、アイヌ女性と連携し最南端、最北端 の先住民族の食文化を日本から世界に発信したいと思ったきっかけから始まっています。 2020年には国内初の「国立アイヌ民族博物館」が設立される予定となっており、この機 会に向けて、先住民族の食文化に光をあてていき、スローフード・インターナショナルが 主催するIndingenous Terra Madreを北海道の地で開催するために、アイヌ女性団体・ メノコモシモシの代表多原氏と語りました。

28日夕方、メノコモシモシの人々による開会の伝統的な儀式が催されました。この儀式は 2日間の祭りの安全祈願であり、ここからはじまった日本スローフード協会とメノコメノ コモシモシ(アイヌ女性会議)の信頼関係を祝福するものでもありました。

29日には、3つのテーマで会議が行われました。

– アイヌにとっての食、そして先住民族としての役割: 文化遺産としての木彫り、舞 踊、音楽、刺繍に比べ、アイヌの「食」はごく最近まで重要視されていませんでし た。そのため、本イベントでは個々それぞれの家庭の中で継承されてきた「アイヌ 伝統食」をパネリストの方に話をしてもらいました。

– アイヌ料理ルネッサンス~カルチャーレボリューションと経済活性化: アイヌの人 びとの社会的・経済的地位は、日本でもっとも低い位置にあると言っても過言では

ありません。アイヌの食文化が再度花開くことだけでなく、食文化を主軸に持続可 能な経済発展がなされるよう、見守っていくことが大切です。

– アイヌ – 自然からの贈りもの ~医食同源: アイヌの人びとはどのように「植物を、 ときに食べものに、ときに薬として」利用してきたのでしょうか。アイヌ食の土台 は、山々の植物を採集することにあります。その多くは薬効もある植物で、神々か らの贈りものだと考えられてきました。

会議のほか、アイヌの伝統的な結婚式、伝統的な収穫舞踊、植物を模したアイヌ刺繍 などを収めた短編映像の上映も行われました。

先住民族が受け継いできた環境と生物多様性への敬意と配慮には、未来をかたち作る上で 欠かすことができない役割があります。また、スローフードの軸にある、人類と地球の未 来のために、農と食の多様性を守ること – これは、様々な人びとの文化的多様性を守るこ となく成し遂げることはできません。

アイヌフードフェスティバルにおいて、スローフードが食と気候変動をつなぐ国際キャン ペーン “Menu for Change” の再出発を発表したのも、この理由からです。食からはじ めれば、誰もが変化の担い手となることができます。スローフードは、生物多様性を守 り、気候変動への影響を最小限にとどめながら食の生産を行い、食育・環境教育に力を入 れ、関わるすべての人々の関心を喚起し、すべてのレベルの政治に働きかけ続けるため、 これからも世界的なネットワークを繋ぎ続けます

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